医療観察法.NET

精神疾患を有する者の保護及び
メンタルヘルスケアの改善のための諸原則

 

1991年12月採択

目次
原則1 基本的自由と権利
原則2 未成年者の保護
原則3 地域社会における生活
原則4 精神疾患を有することの判定
原則5 医学的診察
原則6 秘密の保持
原則7 地域社会と文化の役割
原則8 ケアの基準
原則9 治療
原則10 薬物投与
原則11 治療への同意
原則12 権利の告知
原則13 精神保健施設における権利と条件
原則14 精神保健施設のための資源
原則15 入院の原則
原則16 非自発的入院
原則17 審査機関
原則18 手続き的保障
原則19 情報へのアクセス
原則20 刑事犯罪者
原則21 不服
原則22 監督と救済
原則23 実施
原則24 精神保健施設に関する諸原則の範囲
原則25 既得権の留保

 PDF版のダウンロードはこちら

 

精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの進歩のための諸原則本文への序文

1.  精神疾患を有する者の治療に対する国際的な関心が、近年、増大してきている。国際連合は長年にわたって、その人権がしばしば制限される障害者の保護に関心を払ってきた。精神疾患を有する者は、特に傷つきやすく、特別の保護を必要としている。国際人権規約に則ってこうした者の権利を明確に定義し、確立することが肝要である。

2.  科学と技術の発展は、生活状況をよりよいものにする機会を増大させている。しかしながら、科学技術は社会問題を助長する可能性を持っており、基本的な自由や人権への脅威ともなりうる。同様に、医療や心理療法の技術は、個人の身体的、知的高潔さへの脅威となりうる。

3.  科学や技術が生み出した産物や方法が誤った目的のために使われている。特に精神疾患のために強制入院させられている人々の治療手段として誤って用いられているという気がかりな報告が行われてきた。

4.  独立した公平な機関へのアクセスの方法に関する規定を含め、精神保健法に定められた方法は、患者の自由にとって法定的に重要なものであり、患者の人権と法的権利はあらゆる手段を講じて保護されなければならない。

5.  この諸原則は患者の施設への入院、強制収容、治療、地域社会への退院とリハビリテーションに関連する、あらゆる法的、医学的、社会的、道徳問題をカバーしようとするものではない。国際社会における法的、医学的、社会的、経済的、地勢学的状況のきわめて変化に富んだ状況を勘案すれば、この諸原則が、あらゆる国であらゆる時代に直ちに適応されるべきものではないことは明らかである。

6.  この諸原則は、精神疾患を有する者の保護、およびメンタルヘルスケアの進歩に関するものである。特に、精神疾患のために、精神保健施設に非自発的に入院している少数の患者に焦点を置いている。精神疾患を有し、治療を受けている者の大部分は病院に入院していない。少数が入院し、その大部分は自発的な入院である。ごく少数が非自発的な入院を必要としている。精神疾患に侵された者のケア、支援、治療、リハビリテーションのための施設は、可能な限り、患者の住む地域社会に置かれるべきである。したがって、精神保健施設への入院は、そうした地域社会の施設が不適切であるか、得られない場合に限って行われるべきである。より多くの、より拘束の少ない、代替精神保健サービスを得ることができるような資源を準備することが、この諸原則の適用を、よりたやすいものにすることを確実にする助けとなるであろう。

7.  精神疾患を有する者を虐待から守り、精神疾患であるというレッテルが人の権利を不当に制限する口実とされないように保障することは重要なことであるが、精神疾患を有する者が見捨てられることを防ぎ、ケアと治療の必要性、特に地域社会に統合された人々のケアと治療の必要性が満たされることを保障することも同様に重要である。

8.  この諸原則はとりわけ、各国政府、専門的な機関、国内団体、地域内団体、国際団体、許可された非政府団体(NGOs)、及び個人の手引きとなり、この諸原則を採用し、これらを適用していく上の経済的あるいはその他の現実的困難に打ち勝つための不断の努力を推奨することを目指している。なぜなら、これらの原則は、精神疾患を有する者の基本的な自由と人権と法的権利を保護するための、国際連合の最低限の基準だからである。

9.  したがって、各国政府は、必要なら、国内法をこの諸原則に合わせるよう考慮すべきであり、新しい関連法規を定める場合にはこの諸原則に沿う規定を採用すべきである。この諸原則は患者を保護するための国際連合の最低限の基準である。

 

精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原則

適用

これらの原則は障害、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的若しくはその他の意見、国、民族若しくは社会的出自、法的若しくは社会的身分、年齢、財産又は出生によるいかなる差別もなく適用される。

定義

この原則において、
  「弁護人(counsel)」とは法的又はその他の資格をもつ代理人を意味し、

「独立機関(independent authority)」とは国内法に規定された、制限を有する独立の機関を意味し、

「メンタルヘルスケア(mental health care)」とは人の精神状態の検査及び診断、精神疾患の疑いのある者の治療、ケア、リハビリテーションを含み、

「精神保健施設(mental health facility)」とはメンタルヘルスケアの提供を主たる目的とする施設又は施設の1ユニットを意味し、

「精神保健従事者(mental health practitioner)」とは医師、臨床心理士、看護者、ソーシャルワーカーその他のメンタルヘルスケアに関連する特別な技能について適切な研修を受け、資格を付与された者を意味し、

「患者(patient)」とはメンタルヘルスケアを受けている者を意味し、精神保健施設に入所しているすべての人を含み、

「個人代理人(personal representative)」とは特定の事項に関して患者の利益を代理し、又は患者に代わって特定の権利を行使する義務を法によって課せられた者を意味し、国内法によって別に規定されていない限りにおいて未成年者に対する親又は法的後見人を含み、

「審査機関(the review body)」とは精神保健施設への非自発的入院及び退院制限について、原則17に基づいて審査を行うために設置された機関を意味する。

 

一般的制限条項

以下の原則に定められた権利の行使は、法律によって規定し、かつ、本人若しくは他の者の健康又は安全を保護し、又は公共の安全、秩序、健康、道徳若しくは他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要とされる制限のみを受ける。

【 原則1 基本的自由と権利 】

1. すべての人は、可能な最善のメンタルヘルスケアを受ける権利を有する。こうしたメンタルヘルスケアは保健及び社会ケアシステムの一部を成す。

2. 精神疾患を有する者、又は精神疾患を有する者として処遇を受ける者はすべて、人道的に、かつ、生まれながらにして持つ人間としての尊厳を尊重されつつ処遇される。

3. 精神疾患を有する者、又は精神疾患を有する者として処遇を受ける者はすべて、経済的、性的、及びその他の形態の搾取、身体的又はその他の虐待並びに、品位を傷つける処遇から保護される権利を有する。

4. 精神疾患を理由とする差別はあってはならない。「差別」とは、権利の平等な亨受を無効又は毀損する効果を持つあらゆる区別、排除、又は選別を意味する。精神疾患を有する者の権利の保護、又は改善の確保を専らその目的とする特別な手段は、差別的と見なされてはならない。この諸原則の規定に従って採用され、精神疾患を有する者やその他の者の人権を守るために必要とされる区別、排除、又は選別は、差別に含まれない。

5. 精神疾患を有する者はすべて、世界人権宣言、経済的・社会的及び文化的諸権利に関する国際規約、市民的及び政治的権利に関する国際規約、障害者の権利宣言、並びにあらゆる形態の抑留又は拘禁の下にあるすべての者を保護するための原則など、関連する文書に認められているあらゆる市民的、政治的、経済的、社会的及び文化的権利を行使する権利を有する。

6. 精神疾患のために法的能力を欠くという決定、及び法的能力を欠くために個人的代理人が指名されるという決定はすべて、国内法が規定する独立かつ公平な裁定機関(tribunal)による公正な聴聞を経てなされる。能力の有無が問題とされている者は、弁護人によって代理される権利を有する。能力の有無が問題とされている者が、自らそのような代理を確保できない場合は、その者にそれを支弁する資力が無い範囲において、無償で代理を利用することができる。当該弁護人は、裁定機関が利益の衝突がないと認めない限り、同一の手続きにおいて精神保健施設またはその職員を代理し、同一の手続きにおいて能力の有無が問題とされている者の家族を代理することはできない。能力の有無及び個人的代理人の必要性に関する決定は、国内法が定める合理的な間隔で再検討される。能力の有無が問題とされている者、個人的代理人が指名されている場合にはその代理人、及び他のすべての利害関係者は、この問題に関するいかなる決定に対しても上級裁判所に上訴する権利を有する。

7. 裁判所又は制限を有する他の裁定機関が、精神疾患を有する者が自己に関する諸事を管理する能力に欠くと判断する場合には、その者の状態に照らして必要かつ適切な範囲において、その者の利益の保護を保証する手段が講じられる。

【 原則2 未成年者の保護 】

この諸原則の目的及び未成年者の保護に関する国内法の主旨の範囲内で、未成年者の権利の保護のために必要な場合には、家族以外の個人的代理人の指名を含む、特別な配慮が成される。

【 原則3 地域社会における生活 】

精神疾患を有するすべての者は、可能な限り地域社会に住み、及びそこで働く権利を有する。

【 原則4 精神疾患を有することの判定 】

1. 精神疾患を有するという判定は、国際的に認められた医学的基準による。

2. 精神疾患を有するという判定は、政治的、経済的若しくは社会的地位、文化的、人種的若しくは宗教的集団に所属すること又は直接精神状態に関係しない他の何らかの事由に基づいてはなされてはならない。

3. 家族若しくは職業上の葛藤又は所属する地域社会において支配的な道徳的、社会的、文化的、政治的価値観若しくは宗教的信条との不一致は、精神疾患を診断する際の決定要因とされてはならない。

4. 患者として過去に治療を受け、又は入院したことは、その事自体で、その者が現在又は将来、精神疾患を有するといういかなる判断をも正当化するものではない。

5. 何人も、又はいかなる公的機関も、精神疾患又は精神疾患の結果生じた事柄に直接関連する目的以外で、人を精神疾患を有する者として類別し、あるいはその者が精神疾患を有することを指摘するものではない。

【 原則5 医学的診察 】

何人も、国内法で定められた手続きによる場合を除き、精神疾患を有するか否かを判断するために医学的診察を強制されない。

【 原則6 秘密の保持 】

この諸原則が適用されるすべての人に関して、情報を秘密にする権利は尊重される。

【 原則7 地域社会と文化の役割 】

1. すべての患者は、可能な限り自己の居住する地域社会において治療及びケアを受ける権利を有する。

2. 精神保健施設内で治療が行われる場合、患者は、可能な場合は常に、自己の居住する場所又は家族、友人の居住する場所の近くで治療を受ける権利を有し、及び可能な限り速やかに地域社会に戻る権利を有する。

3. すべての患者は、自己の文化的背景に適した治療を受ける権利を有する。

【 原則8 ケアの基準 】

1. すべての患者は、自己の健康上の必要性に照らして適切な保健医療的及び社会的ケアを受ける権利を有し、他の疾患を持つ者と同じ基準に則したケア及び治療を受ける権利を有する。

2. すべての患者は、不適切な薬物治療法による危害、他の患者、職員、若しくは他の者による虐待、又は精神的苦痛若しくは身体的不快感を惹き起こすその他の行為から保護される権利を有する。

【 原則9 治療 】

1. すべての患者は、最も制限の少ない環境下で、かつ、患者の保健上の必要性と他の人の身体的安全の保護の必要性に照らして適切な、最も制限が少ない、あるいは最も侵襲的でない治療を受ける権利を有する。

2. すべての患者の治療及びケアは、個別的に立案された治療計画に基づいて行われなければならない。その治療計画は患者と検討され、定期的に見直され、必要に応じて変更され、資格のある専門職員によって作成される。

3. メンタルヘルスケアは、常に、国連総会で採択された医療倫理原則などの国際的に承認された基準を含む、精神保健従事者に適用される倫理規範に則して提供される。精神保健の地域及び技術は濫用されてはならない。

4. すべての患者の治療は、患者の自立性を保持及び増進させる方向でなされる。

【 原則10 薬物投与 】

1. 薬物投与は患者の健康上の最善の必要性を満たすために行われ、治療又は診察上の目的でのみ行われるものであって、懲罰や他の人の便宜のためになされてはならない。原則11第15項の規定に従い、精神保健従事者は、効能がすべてに知られているか、又は実証されている薬物のみを処方する。

2. あらゆる薬物投与は、法によってその制限を付与された精神保健従事者によって処方され、患者の診療録に記録される。

【 原則11 治療への同意 】

1. 以下の第6、7、8、13及び15項に規定されている場合を除き、患者のインフォームドコンセントなしには、いかなる治療も行われない。

2. インフォームドコンセントとは、患者の理解しうる方法と言語によって、以下の情報を、十分に、かつ、患者に理解できるように伝達した後、患者の自由意志により、脅迫又は不当な誘導なしに得られた同意をいう。

a) 診断上の評価

b) 提案されている治療の目的、方法、予測される期間及び期待される効果

c) より侵襲性の少ない方法を含む他に考えられる治療法

d) 提案されている治療において考えられる苦痛、不快、危険及び副作用

3. 患者は同意する手続きの間、患者の選んだ一人又は複数の人の同席を要求することができる。

4. 第6、7、8、13及び15項に規定されている場合を除き、患者は治療を拒否し、又は中止させる権利を有する。治療の拒否あるいは中止によって生じる結果については、患者に説明される。

5. 患者はインフォームドコンセントの権利を放棄するよう勧められたり誘導されたりしてはならない。患者がそれを放棄しようとする場合には、インフォームドコンセントなしには治療が行うことができないことが説明される。

6. 第6、7、8、13及び15項に規定されている場合を除き、以下の条件がすべて満たされれば、患者のインフォームドコンセントがなくても、提案された治療計画を実施することができる。

a) 患者が、その時点で、非自発的患者であり、

b) 独立した機関が、上記第2項に規定した情報を含む、関連するすべての情報を得た上で、その時点で患者が提供された治療計画にインフォームドコンセントを与え、若しくは拒絶する能力を欠くと判断し、又は国内法が規定する場合は、患者自身の安全又は他の人の安全を考慮すると、患者が不当にインフォームドコンセントを拒絶していると判断し、かつ

c) 独立機関が、提案された治療計画が患者の健康上の必要に照らして最善の利益であると判断する場合。

7. 第6項は、法による患者に代わって治療に同意する権限を与えられた個人的代理人がいる患者に適用されない。ただし、以下の第12、13、14及び15項に規定されている場合を除き、このような患者については、上記第2項に示した情報を与えられた個人的代理人が代わって同意する場合には、患者のインフォームドコンセントなしに行われうる。

8. 第12、13、14及び15項に規定されている場合を除き、法によって権限を与えられた資格のある精神保健従事者が、患者自身又は他の人に対する即時の又は切迫した危害を防ぐために必要だと判断した場合、インフォームドコンセントのない、いかなる患者に対しても治療を行うことができる。この場合の治療は、この目的のために厳密に必要とされる期間を超えて行われるものではない。

9. 患者のインフォームドコンセントなしに治療を行う権限が与えられているいかなる場合においても、患者に対して治療の性質、可能なあらゆる代替治療について情報を与え、及び可能な限り治療計画の進展に患者を関与させるよう、あらゆる努力が払われる。

10. すべての治療は、それが患者の自発的な意思によるものか、非自発的なものかを記した上で、患者の診療録に直ちに記録される。

11. 患者の身体的拘束又は非自発的な隔離は、精神保健施設に関して公的に認められた手続きに従い、かつ、それが患者若しくは他の人に対する即時の又は切迫した危害を防ぐために唯一の可能な手段である場合を除いては、行ってはならない。これは、その目的のために厳密に必要とされる期間を超えて行われてはならない。身体的拘束又は非自発的隔離が行われた場合はすべて、その理由及びその性質と程度が患者の診療録に記載される。拘束され、又は隔離された患者は、人道的な環境下に置かれ、資格のある職員によるケア及び入念な定期的監督下に置かれる。患者の個人的代理人が存在し、かつ、ふさわしい者であれば、患者の身体的拘束又は非自発的隔離について、その代理人に対して迅速な通知がなされる。

12. 不妊手術は精神疾患の治療としては行われてはならない。

13. 精神疾患を有する者に対する重大な内科的治療又は外科的治療は、国内法がそれを認め、それが患者の健康上の必要性に最も適しており、かつ、患者がインフォームドコンセントを与えた場合に限り行うことができる。患者にインフォームドコンセントを与える能力がない場合において、独立した審査の結果、その治療が認められた場合はこの限りではない。

14. 精神疾患に対する精神外科手術及び他の侵襲的かつ不可逆的治療は、精神保健施設に入院中の非自発的患者には行ってはならない。国内法がその実証を認めている範囲内で、患者にインフォームドコンセントを与え、外部の独立した機関がそのインフォームドコンセントが真に有効なものであり、かつ、その治療が患者の健康上の必要性に最善のものであると認めた場合に限り、それ以外の患者に実施することができる。

15. 臨床試験及び実験的な治療は、インフォームドコンセントを与えない患者には行ってはならない。インフォームドコンセントを与える能力を欠く患者については、この目的のために特別に設置された、権限を有する独立した審査機関が承認を与えた場合に限り、臨床試験や実験的治療を行うことができる。

16. 第6、7、8、13、14及び15項に規定された場合において、患者若しくはその個人的代理人又は利害関係者は誰でも、その治療に関して、裁判所又は他の独立機関に訴えを起こす権利を有する。

【 原則12 権利の告知 】

1. 精神保健施設内の患者は、入院後可能な限り速やかに、本諸原則及び国内法に規定されたすべての権利について、患者が理解できる方式で、理解できる言語によって告知を受ける。告知される情報には、これらの権利に関する説明及び権利を行使する方法が含まれる。

2. 患者がこのような情報を理解できない場合には、理解できるようになるまでの間、患者の権利は、その個人的代理人が存在し、かつ、それが適切であるならばその個人的代理人及び患者の利益を最もよく代理することができ、かつ代理する意志のある個人又は複数の個人に伝達される。

3. 必要な能力を有する患者は、自分に代わって告知を受ける者及び自己の利益を施設管理者に対して代理するものを指名する権利を有する。

【 原則13 精神保健施設における権利と条件 】

1. 精神保健施設内のすべての患者は、特に以下の事項について、最大限の尊重を受ける権利を有する。

a) どこにおいても、法の下の人格として承認されること

b) プライバシー

c) コミュニケーションの自由。これには施設内の他の人とのコミュニケーションの自由、検閲を受けることなく個人的通信を発受する自由、弁護人又は個人的代理人からの訪問を個人的に受け入れ、その他の訪問者の場合には、適切な時間であればいつでも受け入れる自由、及び郵便、電話サービス、並びに新聞、ラジオ、テレビを使用する自由を含む

d) 宗教又は信仰の自由

2. 精神保健施設内の環境及び生活状況は同年齢の人の通常の生活にできる限り近いものでなければならず、特に以下の条件を含まなければならない。

a) レクリエーション、レジャー用施設

b) 教育施設

c) 日常の生活、レクリエーション及びコミュニケーションに必要な物品を購入し、又は受領するための施設

d) 患者の社会的及び文化的背景にふさわしい積極的な活動に参加するための、並びに地域社会への復帰を促進する適切な職業的リハビリテーションの手段とするための施設。並びにそれらの施設を利用するように奨励されること。これらの手段には、患者が地域社会において、雇用を確保又は維持するための職業ガイダンス、職業訓練及び就職紹介などが含まれる。

3. いかなる状況においても、患者は強制労働に従事させられてはならない。患者の必要及び施設運用上の必要に適合する範囲で、患者は自己の希望する種類の仕事を選択することができる。

4. 精神保健施設内における患者の労働は搾取されてはならない。すべての患者は、国内法や習慣に従って、従事したいかなる労働に対しても、患者でないものが同じ労働をした場合に得られるのと同じ報酬を受け取る権利を有する。すべての患者はいずれの場合も、患者の働きに対して精神保健施設が受け取る報酬の中から正当な取り分を受け取る権利を有する。

【 原則14 精神保健施設のための資源 】

1. 精神保健施設では他の保健施設と同じ水準の資源、特に以下の資源を備えるものとする。

a) 十分な数の、資格を有する医学その他の適当な専門技能を持つ職員並びにそれぞれの患者にプライバシー及び適切で積極的な治療プログラムを提供するのに十分な広さ

b) 患者の診断及び治療機器

c) 適切な専門的ケア

d) 薬物投与を含む適切で、定期的かつ包括的な治療

【 原則15 入院の原則 】

1. 精神保健施設で治療を受ける必要がある場合、非自発的入院を避けるよう、あらゆる努力が払われる。

2. 精神保健施設へのアクセスは、他の疾患に関する施設へのアクセスと同様に行われる。

3. 非自発的に入院したのではないすべての患者は、原則16に規定する非自発的入院患者として退院を制限する基準が満たされない限り、いつでも精神保健施設から退去する権利を有し、患者にはこの権利が告知される。

【 原則16 非自発的入院 】

1. 患者として非自発的に精神保健施設に入院し、又は既に患者として自発的に精神保健施設に入院した後、非自発的入院患者として退院制限されるのは、この目的のために法律によって権限を与えられた資格を有する精神保健従事者が、原則4に従って、その者が精神疾患を有しており、かつ、以下のように判断する場合に限られる。

a) その精神疾患のために、即時の又は切迫した自己若しくは他の人への危害が及ぶ可能性が大きいこと、又は

b) 精神疾患が重篤であり、判断力が阻害されている場合、その者を入院させず、又は入院を継続させなければ、深刻な状態の悪化が起こる見込みがあり、最小規制の代替原則に従って、精神保健施設に入院させることによってのみ得られる適切な治療が妨げられること。 b)の場合、可能な場合には、第一の精神保健従事者とは独立した第二の精神保健従事者の診察を求めるべきである。こうした診察が行われた場合、第二の精神保健従事者が同意しなければ、非自発的入院、又は退院制限を行うことはできない。

2. 非自発的入院又は退院制度は、当初は、審査機関による非自発的入院又は退院に関する審査を待つ間の、観察及び予備的な治療を行うための、国内法の定める短い期間に限られる。入院の理由は遅滞なく患者に伝えられる。入院の事実及びその理由は、審査機関、患者の個人的代理人が指名されていればその個人的代理人及び患者が拒否しなければその家族に対して、迅速かつ詳細に伝達される。

3. 精神保健施設は、国内法で規定されている権限を有する公的機関によって、非自発的入院の受け入れを指定されている場合に限り、非自発的入院を受け入れることができる。

【 原則17 審査機関 】

1. 審査機関は司法的又はその他の独立した公正な機関で、国内法によって設置され、国内法によって定められた手続きによって機能する。審査機関は、その決定を行うに際し、一人以上の資格のある、独立した精神保健従事者の意見を求め、その助言を勘案する。

2. 原則16第2項の要求するところに従い、非自発的患者としての入院又は退院の決定に関する審査機関の最初の審査は、入院又は退院の決定後可能な限り速やかに実施され、国内法によって規定されている簡単かつ迅速な手続きに従って行われる。

3. 審査機関は、国内法で規定されている合理的な間隔をおいて、非自発的入院患者の事例を定期的に審査する。

4. 非自発的入院患者は、国内法によって規定されている合理的な間隔をおいて、審査機関に対し、退院又は自発的入院患者となるための審査を要求できる。

5. いずれの審査においても、審査機関は、原則16第1項に規定されている非自発的入院の基準が依然として満たされているか否かの検討を行い、もしそれが満たされていなければ、当該患者は非自発的入院患者としての立場から解放されなければならない。

6. 患者の治療に責任を持つ精神保健従事者が、当該患者の状態がもはや非自発的患者として退院制限すべき状態ではないと判断した場合には、その者を非自発的患者として処遇することを止めるよう指示する。

7. 患者若しくはその個人的代理人又はその他の利害関係者は、当該患者を精神保健施設に入院させ、又は退院制限をする決定に対して、上級裁判所に訴える権利を持つ。

【 原則18 手続き的保障 】

1. 患者は不服申立て又は訴えにおける代理を含む事項について、患者を代理する弁護人を選任し、指名する権利を有する。もし、患者がこのようなサービスを得られない場合には、患者がそれを支弁する資力が無い範囲において、無償で弁護人を利用することができる。

2. 患者は必要な場合は通訳のサービスの援助を受ける権利を有する。このサービスが必要であり、患者がそれを得られない場合、患者がそれを支弁する資力が無い範囲において、無償でこのサービスを利用することができる。

3. 患者及び患者の弁護人はいかなる聴聞においても、独立した精神保健報告及びその他の報告書並びに、証言、書証その他の関連性を有し、許容され得る証拠を要求し、並びに提出することができる。

4. 提出される患者の記録並びにすべての報告書及び文書の写しは、患者に開示することが患者の健康に重大な害を及ぼし、又は他の人の安全に危険を及ぼすと判断される特別な場合を除いて、患者及び患者の弁護人に与えられる。国内法の規定に従い、患者の与えられない文書は、それが秘密裡に行いうる場合は、患者に個人的代理人及び弁護人に提供される。文書の一部が患者に開示されない場合は、患者又は患者の弁護人が存在する場合はその弁護人に、差し止めの事実及びその理由が通知され、かつ、司法的審査が行われる。

5. 患者並びに患者の個人的代理人、及び弁護人は、いかなる聴聞においても、これに出席し、参加し、個人的に聴聞を受ける権利がある。

6. 患者又は患者の個人的代理人若しくは弁護人が、特定の人物の聴聞への出席を求めた場合、その者の出席が患者の健康に重大な害を及ぼし、又は他の人の安全に危険を及ぼす可能性があると判断される場合を除いて、その者の出席は認められる。

7. 聴聞又はその一部が公開されるか若しくは非公開にされるか、及びその結果を公に報じうるか否かの決定に際しては、患者自身の希望、患者及び他の人のプライバシー保護の必要性並びに患者の健康に重大な害を及ぼすことを防ぎ、他の人に危険を及ぼすことを避ける必要性について十分な考慮が払われる。

8. 聴聞の結果得られた結果とその理由は文書によって示される。その写しは患者並びに患者の個人的代理人及び弁護人に与えられる。結論の全部又は一部を公表するか否かの決定に際しては、患者自身の希望、患者及び他の人のプライバシー保護の必要性、司法手続きの公開による公共の利益並びに患者の健康に重大な害を及ぼすことを避け、または他の人に危険を及ぼすことを避ける必要性について十分な考慮が払われる。

【 原則19 情報へのアクセス 】

1. 患者(この原則においては以前患者であった者も含む)は、精神保健施設内に保存されている患者の健康及び個人記録のうち、当該患者に関する情報に接する権利を有する。この権利は、患者の健康に重大な害を及ぼすことを防ぎ、又は他の人の安全に危険を及ぼすことを防ぐために制限されうる。国内法は、患者に開示されない情報は、それが秘密裡に行い得る場合は、患者の個人的代理人及び弁護人に与えられるべきことを規定することができる。どのような情報も、患者に提供されない場合には、患者又は患者の弁護人がいる場合にはその弁護人に、差し止めの事実及びその理由が通知され、かつ、司法的審査が行われる。

2. 患者又は患者の個人的代理人、若しくは弁護人の文書によるいかなる意見も、要求があれば、患者のファイルに加えられる。

【 原則20 刑事犯罪者 】

1. この原則は、刑事犯罪のために自由刑に服している者又は刑事訴訟若しくは捜査のために拘留されている者で、精神疾患があると判断され、又はその可能性があると信じられている者にも適用される。

2. このような者はすべて、原則1に示したように最も有効なメンタルヘルスケアを享受すべきである。この諸原則は、こうした事情の下で必要な最小限の修正と例外を除いて、可能な限り最大限に適用されなければならない。この修正と例外は原則1第5項に挙げた諸文書による個人の権利を侵害するものではない。

3. 国内法は、裁判所又は権限を有する他の公的機関が、的確な独立した医学的な助言に従って、このような者が精神保健施設に入院できるよう命じることを規定できる。

4. 精神疾患であると判断された者の治療は、いかなる場合も原則11に則する。

【 原則21 不服 】

患者及び以前患者であった者はすべて、国内法によって定められた手続きによって不服申立てをする権利を有する。

【 原則22 監督と救済 】

各国は、この諸原則の実現のために、精神保健施設の監査、不服申立ての受理、調査、解決及び職業上の違反行為又は患者の権利の侵害に対する適切な懲戒若しくは司法手続きのために、適当な制度を確保する。

【 原則23 実施 】

1. 各国は、適切な立法、司法、行政、教育及びその他の適切な措置を通じてこの諸原則を実現すべきであり、これらの措置は定期的な見直しを受ける。

2. 各国は、適切で積極的な手段によって、この諸原則を周知させるものとする。

 

【 原則24 精神保健施設に関する諸原則の範囲 】

この諸原則は、精神保健施設に入院しているすべての者に適用される。

【 原則25 既得権の留保 】

この諸原則が権利を認めていない、又は限定された範囲においてのみ認めているにすぎないという理由によって、適用可能な国際法又は国内法によって認められている権利を含む、患者の既得の権利が制限され、又は損なわれることはない。

ページの先頭に戻る

トップページに戻る

トップページに戻る メールマガジン登録