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障害者権利条約の国内履行のための法整備

山本眞理
世界精神医療ユーザーサバイバーネットワーク(WNUSP)理事

 

前提としてこの条約はなんら新しい権利を認めたものではなく、国連人権憲章の最低水準の人権を障害者に実質的に保障するものである。
  非差別すなわち他のものと平等な、とある以上国内の人権水準一般とりわけ刑事司法における人権水準の向上が必要。
必要なものは
1 人権救済法ないしは人権擁護法 すべての市町村に総合的な行政から独立した人権救済窓口を作ること(障害に特化せず、総合的な)
2 刑事司法の全面改革
  自白を証拠として認めないこと、3日以上の勾留を認めないこと、保釈を権利として認めることなど
  獄中医療は厚生労働省管轄として医療保険を使うこと
3 患者の権利法制
  福祉社会的サービスについては最終的には
4 障害者高齢者あるいは外国人失業者などなど社会的マイノリティーに対する総合的社会サービス法の制定(いうまでもないが介護保険統合ではない)
 いずれにしろ精神障害者のみを対象とした法制度は全面廃止を目指すべき
 いきなりできないとすればむしろ上記のような立法をめざし、特別法の縮小を図るべき。
 この中で、地域で必要なサービスの根拠を作っていく。強制に向けてだけ予算配分が強化されている実態を打破し、烙印を恐れずサービス利用できることが目標。
 ただ特別法がありうるとすれば、脱施設法地域移行保障法というもので、高齢者全障害者の施設解体への時限立法(ハンセン特別法のようなイメージ)
  ほとんど全面的な法制度改革が必要と考えられるが、精神障害者にとって重要な強制をめぐる条文を中心にあげると(邦訳は長瀬・川島 太字は山本)
原則としては以下があげられている。
医療観察法については条約の以下の条文からいって直ちに廃止しかないという結論が出る。

 

1 条約全体を貫く非差別と自己決定の尊重と政府の義務

第3条 一般原則


この条約の原則は、次のとおりとする。
(a)固有の尊厳、個人の自律(自ら選択する自由を含む)及び人の自立の尊重
(b)非差別〔無差別〕

(c)社会への完全かつ効果的な参加及びインクルージョン
(d)差異の尊重、並びに人間の多様性の一環及び人類の一員としての障害のある人の受容
(e)機会の平等〔均等〕
(f)アクセシビリティ
(g)男女の平等
(h)障害のある子どもの発達しつつある能力の尊重、及び障害のある子どもがそのアイデンティティを保持する権利の尊重
さらにこの原則を貫くための各国政府の義務

 

第4条 一般的義務


1 締約国は、障害に基づくいかなる種類の差別もない、障害のあるすべての人のすべての人権及び基本的自由の完全な実現を確保し及び促進することを約束する。このため、締約国は、次のことを約束する。
(a)この条約において認められる権利を実施するため、すべての適切な立法措置、行政措置その他の措置をとること。
(b)障害のある人に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し又は廃止するためのすべての適切な措置(立法措置を含む)をとること。
(c)すべての政策及び計画において、障害のある人の人権の保護及び促進を考慮に入れること。
(d)この条約に合致しないいかなる活動又は行為をも差し控え、かつ、公の当局及び機関がこの条約に従い行動することを確保すること。
以下略

第5条 平等及び非差別


1 締約国は、すべての者が、法律の前及び下において平等であり、かつ、いかなる差別もなしに法律の平等な保護及び利益を受ける権利を有することを認める。
2 締約国は、障害に基づくあらゆる差別を禁止するものとし、障害のある人に対していかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な法的保護を保障する。
3 締約国は、平等を促進し及び差別を撤廃するため、合理的配慮が行われることを確保するためのすべての適切な措置をとる。

 

 

2 拘禁手続きにおける問題点および隔離収容の禁止

第13条 司法へのアクセス


1 締約国は、障害のある人がすべての法的手続(調査〔捜査〕段階その他の予備段階のものを含む)において直接及び間接の参加者(証人を含む)として効果的な役割を果たすことを容易にするため、手続上の配慮及び年齢に適した配慮を行うこと等により、障害のある人が他の者との平等を基礎として司法に効果的にアクセスすることを確保する。
2 締約国は、障害のある人が司法に効果的にアクセスすることを確保することに役立てるため、司法に係る分野に携わる者(警察官及び刑務官を含む)に対する適切な訓練を促進する。

 

第14条 身体の自由及び安全


1 締約国は、次のことを確保する。
(a)障害のある人が、他の者との平等を基礎として、身体の自由及び安全についての権利を享有すること。
(b)障害のある人が、他の者との平等を基礎として、自由を不法に又は恣意的に奪われないこと、いかなる自由の剥奪も法律に従い行われること、及びいかなる場合においても自由の剥奪が障害の存在により正当化されないこと。
2 締約国は、障害のある人が、いずれの手続を通じても自由を奪われた場合には、他の者との平等を基礎として国際人権法による保障を受ける権利を有すること、並びにこの条約の趣旨及び原則に従い取り扱われること(合理的配慮を行うことによるものを含む)を確保する。

 

第19条 自立〔自律〕した生活及び地域社会へのインクルージョン

この条約の締約国は、障害のあるすべての人に対し、他の者と平等の選択の自由を有しつつ地域社会で生活する平等の権利を認める。締約国は、障害のある人によるこの権利の完全な享有並びに地域社会への障害のある人の完全なインクルージョン及び参加を容易にするための効果的かつ適切な措置をとるものとし、特に次のことを確保する。
(a)障害のある人が、他の者との平等を基礎として、居住地及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること、並びに特定の生活様式で生活するよう義務づけられないこと。
(b)障害のある人が、地域社会における生活及びインクルージョンを支援するために並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な在宅サービス、居住サービスその他の地域社会支援サービス(パーソナル・アシスタンスを含む)にアクセスすること。
(c)一般住民向けの地域社会サービス及び設備が、障害のある人にとって他の者との平等を基礎として利用可能であり、かつ、障害のある人の必要に応ずること。

 

3 強制医療をめぐる問題点

第12条 法律の前における平等な承認


1 締約国は、障害のある人が、すべての場所において、法律の前に人として認められる権利を有することを再確認する。
2 締約国は、障害のある人が生活のあらゆる側面において他の者との平等を基礎として法的能力を享有することを認める。
3 締約国は、障害のある人がその法的能力の行使に当たり必要とする支援にアクセスすることができるようにするための適切な措置をとる。
4 締約国は、国際人権法に従い、法的能力の行使に関連するすべての措置には濫用を防止するための適切かつ効果的な保護が含まれることを確保する。当該保護は、法的能力の行使に関連する措置が障害のある人の権利、意思及び選好を尊重すること、利益相反及び不当な影響を生じさせないこと、障害のある人の状況に対応し及び適合すること、可能な限り最も短い期間適用すること、並びに権限のある、独立の、かつ、公平な当局又は司法機関による定期的な審査に従うことを確保しなければならない。当該保護は、当該措置が障害のある人の権利及び利益に及ぼす影響の程度に対応したものとする。
5 締約国は、この条の規定に従うことを条件として、財産の所有又は相続についての、自己の財務管理についての並びに銀行貸付、抵当その他の形態の金融上の信用への平等なアクセスについての障害のある人の平等な権利を確保するためのすべての適切かつ効果的な措置をとる。締約国は、また、障害のある人がその財産を恣意的に奪われないことを確保する。

 

第15条 拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰からの自由


1 いかなる者も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。特に、いかなる者も、その自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けない。
2 締約国は、障害のある人が拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けることを、他の者との平等を基礎として防止するため、すべての効果的な立法上、行政上、司法上その他の措置をとる。

 

第16条 搾取、暴力及び虐待からの自由


1 締約国は、家庭の内外におけるあらゆる形態の搾取、暴力及び虐待(これらのジェンダーを理由とする状況を含む)から障害のある人を保護するためのすべての適切な立法上、行政上、社会上、教育上その他の措置をとる。
2 締約国は、また、搾取、暴力及び虐待の事案を防止し、認識し及び報告する方法に関する情報及び教育を提供すること等を通じて、特に、障害のある人並びにその家族及び介助者に対してジェンダー及び年齢を考慮した適切な形態の援助及び支援を行うことを確保することにより、あらゆる形態の搾取、暴力及び虐待を防止するためのすべての適切な措置をとる。締約国は、保護サービスが年齢、ジェンダー及び障害を考慮したものであることを確保する。
3 締約国は、あらゆる形態の搾取、暴力及び虐待の発生を防止するため、障害のある人向けのすべての設備及び計画が、独立した当局により効果的に監視〔モニター〕されることを確保する。
4 締約国は、あらゆる形態の搾取、暴力又は虐待の被害者となる障害のある人の身体的、認知的及び心理的な回復、リハビリテーション並びに社会復帰〔社会的再統合〕を促進するためのすべての適切な措置(保護サービスの提供によるものを含む)をとる。このような回復及び復帰は、障害のある人の健康、福祉、自尊心、尊厳及び自律を促進する環境において行われるものとし、ジェンダー及び年齢に特有の必要を考慮に入れる。
5 締約国は、障害のある人に対する搾取、暴力及び虐待の事案が明らかにされ、調査〔捜査〕され、かつ、適切な場合には訴追されることを確保するための効果的な法令及び政策(女性及び子どもを中心に据えた法令及び政策を含む)を策定する。

 

第17条 個人のインテグリティ〔不可侵性〕の保護


  障害のあるすべての人は、他の者との平等を基礎として、その身体的及び精神的なインテグリティ〔不可侵性〕を尊重される権利を有する。

 

第25条 健康


  締約国は、障害のある人が障害に基づく差別なしに到達可能な最高水準の健康を享受する権利を有することを認める。締約国は、障害のある人がジェンダーを考慮した保健サービス(保健に関連するリハビリテーションを含む)にアクセスすることを確保するためのすべての適切な措置をとる。締約国は、特に、次のことを行う。

(a)障害のある人に対し、他の者に提供されるものと同一の範囲、質及び水準の無償の又は負担可能な費用の保健サービス(性及び生殖に関する保健サービス、並びに地域社会の公衆衛生計画を含む)を提供すること。

(b)障害のある人が特にその障害のために必要とする保健サービスを提供すること。当該保健サービスには、早期発見及び適切な場合には早期治療が含まれるとともに、二次障害〔新たに出現する障害〕、特に子ども及び高齢者の二次障害を最小にし及び予防するためのサービスが含まれる。

(c)当該保健サービスを、障害のある人自身が属する地域社会(農村を含む)に可能な限り近くで提供すること。


(d)保健の専門家に対し、他の者と同一の質の医療〔ケア〕(特に、十分な説明に基づく自由な同意に基づいた医療)を障害のある人に提供するよう要請すること。このため、締約国は、特に、障害のある人の人権、尊厳、自律及び必要に対する意識が高められるように、公的及び私的な保健部門のために訓練活動を先導し及び倫理規則を普及する。

 

第26条 ハビリテーション及びリハビリテーション


1 締約国は、障害のある人が、最大限の自立〔自律〕、十分な身体的、精神的、社会的及び職業的な能力、並びに生活のあらゆる側面への完全なインクルージョン及び参加を達成しかつ維持することを可能とするため、特にピア・サポート〔障害のある人相互による支援〕を活用して、効果的かつ適切な措置をとる。このため、締約国は、特に保健、雇用、教育及び社会サービスの分野において、ハビリテーション及びリハビリテーションについての包括的〔多様〕なサービス及び計画を企画し、強化し及び拡張する。この場合において、これらのサービス及び計画は、次のとおりとする。
(a)可能な限り最も早い段階で開始すること、並びに個人の必要及び能力に関する学際的な評価に基づくこと。
(b)地域社会及び社会のあらゆる側面への障害のある人の参加及びインクルージョンを容易にするものであること、障害のある人により任意〔自由〕に受け入れられるものであること、並びに障害のある人により自己の属する地域社会(農村を含む)に可能な限り近くで利用されることができること。
2 締約国は、ハビリテーション及びリハビリテーションのサービスに従事する専門家及び職員に対する初期訓練及び継続訓練の充実・強化を促進する。
3 締約国は、障害のある人向けの器具・装具〔福祉用具〕及び支援機器〔福祉機器〕であって、ハビリテーション及びリハビリテーションを容易にするものの供給、知識及び使用を促進する。

 

4 障害者団体の条約履行および障害者施策に関する参加保障

第4条 一般的義務


3 締約国は、この条約を実施するための法令及び政策を策定し及び実施するに当たり、並びに障害のある人と関連する問題についての他の意思決定過程において、障害のある人(障害のある子どもを含む)を代表する団体を通じて、障害のある人と緊密に協議し、かつ、障害のある人を積極的に関与させる。

 

第32条 国際協力


1 締約国は、この条約の目的及び趣旨を実現するための国内的な努力を支援するものとして国際協力及びその促進が重要であることを認めるものとし、これに関しては、国家間において、並びに適切な場合には国際的及び地域的な関係機関並びに市民社会特に障害のある人の団体と共同して、適切かつ効果的な措置をとる。このような措置には、特に次のことを含むことができる。

 

第33条 国内的な実施及び監視〔モニタリング〕


1 締約国は、その組織・制度に従い、この条約の実施に関連する事項を取り扱う1又は2以上の担当部局〔フォーカルポイント〕を政府内に指定する。締約国は、また、異なる部門及び段階におけるこの条約の実施に関連する活動を容易にするため、政府内に調整のための仕組みを設置し又は指定することに十分な考慮を払う。

2 締約国は、その法律上及び行政上の制度に従い、この条約の実施を促進し、保護し及び監視〔モニター〕するための枠組み(適切な場合には、1又は2以上の独立した仕組みを含む)を自国内で維持し、強化し、指定し又は設置する。締約国は、当該仕組みを指定し又は設置する場合には、人権の保護及び促進のための国内機関の地位及び機能に関する原則を考慮に入れる。

3 市民社会、特に、障害のある人及び障害のある人を代表する団体は、監視〔モニタリング〕の過程に完全に関与し、かつ、参加する。

 

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